「スマホで仕事するなんてけしからん!」と言われていた過去とは違い、最近ではSNSを事業の集客活動として導入するのは当たり前となってきました。しかし、まだまだ事業の中でしっかりと活用できている企業様は少ない印象です。
中でもInstagramは一般のユーザーが使う楽しみとしてのSNSではなく、企業が集客活動に使える有力なツール(チャネル)となってきています。ここまでSNS集客が広まっているものの、企業の担当者としては「どうすれば集客できるか分からない。」「フォロワー数を増やしたいが、なかなか増えない。」「何に役立つか分からず投稿している。」という方が多いのが現状です。
そこでこの記事では、そもそも企業としてInstagramを運用する目的、またその運用の中での細かな目標数値の設定方法についてご紹介します。
Instagramは幅広い年齢層に活用されているSNS
企業がここまでInstagramを活用する流れになってきた背景には、Instagram自体のユーザー数が拡大してきたことが挙げられます。Instagramというと若い子が使う写真投稿アプリをイメージされている方も多いかもしれませんが、今となっては幅広い年齢層で利用されているビジネスツールになっています。
月刊アクティブユーザー数3,300万人
Instagramをアクティブに使っているユーザーは日本国内で3,300万人いると言われています。しかもこれは2019年のデータであり、2024年現在はさらにユーザー数が増加していると予想できます。全てが個人使用とは言い切れませんが、日本人の4分の1以上の人がInstagramをアクティブに使用してるという規模感。
SNSの中にはFacebook、Twitter、YouTube、LINEなどが含まれます。Instagramのユーザー数3,300万人というのはかなり大きな数字に見えますが、実は
- LINE:9,200万人
- YouTube:6,500万人
- Twitter:4,500万人
- Facebook:2,600万人
とInstagramのユーザー数だけを見ると、他のSNSに劣っているのが現状。
出典:総務省情報通信政策研究所「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」
ユーザーは若年層が多いが、30代以上にも利用されている
Instagramユーザーの年代を調べると
10代 | 69% |
20代 | 68.1% |
30代 | 55.6% |
40代 | 38.7% |
50代 | 30.3% |
60代 | 13.8% |
といった利用年代層となっています。10代、20代の利用者層が多いのはイメージがつくかもしれませんが、実は30代以上でも利用率が50%以上となっています。実はTwitter、Facebookなどは30代の利用者割合は50%以下です。
40代以上の利用率は多少低くなっているものの、Instagramは10代の若者ばかりではなく30代まで幅広く活用されているのがInstagramの強みです。つまり、Instagramで効果的な拡散手法を見つけることができれば、しっかりと商品やサービスの購買層である30代にもリーチ出来るということです。
Instagramで投稿できるコンテンツの種類
Instagramは写真を投稿するアプリと思われている方も多いかもしれませんが、何も写真を投稿して「いいね」するだけのアプリではありません。
写真投稿とキャプション
と言っても、もちろんInstagramのメインコンテンツが写真であることに違いありません。写真だけを投稿するというよりは、写真と何か一言を添えたテキスト(キャプション)を投稿するのがメインです。
通常の投稿(ポスト)はユーザーのホームフィードに表示されるコンテンツです。目を引く写真、特徴的なキャプションなどによって顧客の手を止め、コンテンツを見てもらうことが可能。
動画投稿とキャプション
Instagramの投稿には写真だけではなく動画を投稿することも可能です。通常フィードに投稿する動画は最長60秒までのものが投稿できます。それ以上に長い動画を投稿することはできません。
フィードに表示される動画投稿はユーザーがフィードを流し見しているときに表示されるものであり、手を止めてもらうための施策としては効果的です。しかし、動画内容を見極めなければ飽きられてしまい、逆にフォローを外される原因にもなりかねません。
リール動画
Instagramのリール動画というのは、最長90秒の動画を投稿できる機能です。
フィードに投稿する動画投稿とは違い、キャプションより動画自体がメインで縦型フルスクリーンで全画面表示されます。また、テキストやスタンプ、音楽、ARによるエフェクト、フィルターなどの編集も可能で、オリジナル性の高い動画を投稿できます。
Instagramの発見タブにもよく表示されるため、新規集客のためにリール動画を大量投稿しているアカウントもありますね。
ストーリーズ
このストーリーズがInstagramの大きな特徴かもしれません。ストーリーズというのは投稿後24時間で掲載が終わる動画コンテンツ(※静止画もあり)であり、基本的には自分のフォロワーに表示される機能となります。
最長60秒の動画を投稿できるほか、写真だけでも投稿できますし、通常投稿をストーリーズにシェアすることも可能です。一度使った(投稿した)コンテンツの2次利用としてストーリーズを活用しているアカウントも多数見受けられます。
企業がInstagramを活用する目的
このようにInstagramにはさまざまな機能があり、利用している年齢層も比較的若く、それでいて国内月間3,300万人がアクティブに利用しています。これは既にただの若者が遊びで使っているアプリではなく、事業の告知戦略の一環として十分に活用できるものとなってきています。
現にここ10年くらいで多くの企業がInstagramを活用して事業を伸ばしています。では、「事業を伸ばす」というざっくりしたものではなく、より細かなセクションで企業としてどのような目的でInstagramを活用していけば良いのでしょうか。
自社商品の宣伝活動を目的にする
Instagramはユーザー同士で投稿のシェアができる機能もあるため、商品の宣伝活動に大きく役立ちます。この商品の宣伝というのがInstagram活用ではかなりメジャーな使い方ではないでしょうか。
通常のフィード投稿は写真とテキストで商品の宣伝ができますし、リール動画を活用することによって動画で商品の説明が可能になります。さらに、ストーリーズの機能を使えば顧客にアンケートを取ることもできますし、より広い拡散を狙うことが可能になります。
ウェブサイトで商品紹介をしたり、ブログを書いたり、と言った手法ももちろんありますが、よりラフに写真とテキストで商品が宣伝できるのは大きなメリットです。
実際にユーザーの集客を行う
Instagramにはフォローという仕組みがあり、自分がフォローしたアカウントの投稿はその人のホームフィードに表示されるようになります。さらに、ストーリーズもフィード上部に表示されることにより、接触頻度を大きく上げることが可能。
日常的に顧客の目に留まる状態が作れることにより、キャンペーン告知やクーポンの配布、Instagramショップへの誘導などが可能となります。顧客との接触頻度が高くなり、商品やサービスについての情報配信が早くなることによって、自社のサービスサイトやネットショップへ顧客を誘導することが出来ます。
顧客と交流しレビューを集める
Instagramは写真や動画を投稿するだけではなく、投稿そのものに対してのコメント機能があります。これは通常投稿だけではなくストーリーズにもありますし、アカウント同士のDM(ダイレクトメッセージ)機能もあります。さらにストーリーズには投票を集めるような機能もありますし、そもそも拡散して友人に投稿内容を知らせるような機能が存在します。
このように、InstagramというSNSはベースとして情報を拡散しつつユーザー同士の相互的なコミュニケーションが取れるように設計されているのです。そのため、企業が活用する場合もこの相互的コミュニケーションの機能は無視することができず、積極的に活用するべき。
自社投稿に対しての顧客のコメント、拡散された投稿に対してついているコメント、アンケート結果などを集めることによって、顧客が商品やサービスに対してどのような印象を持っているのか、一次情報を集めることが可能になります。
企業として設定できるInstagramのKPI、KGI
企業としてInstagramを活用する目的はさまざまかもしれませんが、事業の一環としてInstagramを使用する以上、目的・目標を設定しておく必要があります。ただなんとなくSNSを更新しているだけでは明確な成果も挙げられませんし、そもそも売り上げに繋がらないので企業として実行する意味がありません。
Instagramを運用していく最終ゴールとなる目的(KGI)を設定し、その目的を達成するための要件となる通過点的な目標(KPI)を設定することによって、Instagram運用の成果を最大化することができるでしょう。
- KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標
- KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標
KGI(ゴール)を明確に設定し、KPI(業績指標)を追いかけていくことによって、Instagram運用が目標に対してどの程度達成できているのか、次はどのようなアクションが必要になるのかを洗い出すことが可能となります。
KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標
まずは、Instagramを活用するときの最終目標を設定しなければいけません。よく設定されている目標としては「Instagram経由のネットショップ売上〇〇万」みたいなものです。やはり、最終的には企業の売り上げに繋げる必要があるので、ここがKGIになるでしょう。
ただ、その中でも「Instagramフォロワーからの紹介購入〇〇万円」のように、計測が難しい部分をKGIにするケースもあります。その場合、最終目標として売り上げを意識していることは同じでも、KPIとして設定される項目が変わってきたりします。
KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標
KGIを設定したら、その目標を達成するための通過点(KPI)を設定します。Instagramでよく利用されるKPIの要素としては、
- フォロワー数
- インプレッション数(表示回数)
- リーチ数(閲覧した人数)
- いいね、コメントなどのエンゲージメント率
- プロフィールページへのアクセス数
- リンクのクリック数
などが挙げられます。
KPI設定は”SMART”で
KPIを設定すると言っても、事業の通過点はさまざまなポイントがありますし、さまざまな観点から計画しなければいけません。そこで、KPIを設定するときには目標設定方法として
- S|Specific(明確に)
- M|Measurable(計測できる)
- A|Achievable(達成可能な)
- R|Related(ゴールとの関係性がある)
- T|Time bound(期間の定めがある)
このように設定するよう意識しましょう。
なんとなくぼんやりと「投稿を伸ばす」と言った目標ではなく、「Instagramインサイトで確認した場合の、投稿リーチ数が1週間10,000リーチ達成する投稿を、3ヶ月以内に作成。」と言った形で、誰が見ても分かるものを設定します。リーチ数は数値で表されるものであり、誰がどのような形で見ても10,000件という数値は変わりません。
Instagramで設定できるKPIの種類
Instagramを利用していく中で設定できるKPIには、どのような種類があるのでしょうか。実際に設定するKPIは数値化する必要があるため、企業や行なっている事業によって細かな設定は異なりますが、大きく分けると
フォロワー数
フォロワー数はその名の通り、自分のアカウントをフォローしてくれている人数を表します。
ユーザーがフォローしてくれていると自分の投稿やリール、ストーリーズを優先的に表示することができるため、商品の説明や告知をするときに役立ちます。さらに、自分の投稿シェアしてくれる可能性も出てくるため、フォロワーからの拡散力を期待できます。
認知拡大を目指しているのであれば、フォロワー数をKPIの一つに設定することも有効でしょう。
投稿のリーチ数
リーチ数というのは、その投稿が何人の人に届いたかという数値になります。
投稿(リール等を含む)を見てくれるのはフォロワーだけではありません。Instagramには発見タブと呼ばれるセクションがあり、そこではフォロワー以外の投稿が多数表示されています。その発見タブに投稿が掲載されることによって、自分のフォロワー以外の人にも投稿を見てもらうことが可能となります。
投稿を多くの人に知ってもらうことによって、認知拡大、新規集客に役立てることが可能となります。リーチ数をKPIとして設定するときには、フォロワーのリーチ数とフォロワー以外のリーチ数を分けて把握しておくことが大事です。
投稿のインプレッション数(表示回数)
インプレッション数というのは、その投稿が何回表示されたかを指す数字です。
先ほどのリーチ数は”何人”見てくれたかを表す数字だったのに対し、インプレッション数は”何回”表示されたかを表す数字です。つまり、同じ人に何回も表示されていれば表示回数は増えるものの、リーチ数は増えません。たくさん表示されているということは、ユーザーの興味関心と強い関係性があるとInstagramが判断して露出を強めてくれていると判断できます。
表示回数が多い投稿かどうかを分析することができれば、自分の投稿がInstagramのアルゴリズムの中でどのように認識されているかを見極めることができます。また、表示回数を一つのKPIとすることによって、ユーザーとの繋がりを把握できます。
エンゲージメント率
エンゲージメントというのは、Instagramの投稿に対して「いいね」や「コメント」「保存」などユーザーがアクションを取ってくれている事を示す数字です。Instagramは相互的にコミュニケーションが取れるSNSです。そのため、エンゲージメントはとても重要な数字と言えます。
フォロワー数と比較してエンゲージメントが率が高い投稿というのは属性が合っていると判断できますし、逆にエンゲージメント率が低い投稿はフォロワーに求められていない事を指します。アカウントが発信している情報がどれだけフォロワーに求められているかを測るためにも、エンゲージメント率を一つのKPIとして設定しておくのは効果的でしょう。
ハッシュタグ投稿数
Instagramの一つの特徴にハッシュタグ「#」というものがあります。これは、投稿の中身を一言で表したものであり、Instagram検索の際によく使われるものです。
自社の宣伝をしたいときやオリジナル商品のブランディングをしたいときには、その商品名やサービス名のオリジナルハッシュタグを作成するケースが多々あります。新しいハッシュタグは自由に設定が可能であり、自分以外のユーザーでもそのハッシュタグを使って投稿することが可能となります。
自分以外が発信した、そのオリジナルハッシュタグの投稿数が増えているということは、それだけその商品やサービスの認知が拡大している事を表します。そのため、認知拡大を行いたいときにはハッシュタグの投稿数、検索数を増やしていくことも重要なKPIとなります。
リンクのクリック
Instagramストーリーズにはリンクの機能がついており、投稿から別のウェブサイト(自社ネットショップなど)にユーザーを遷移させることが可能です。通常投稿には外部リンクを設置することができないのですが、ストーリーズ投稿の場合だけ外部サイトへのリンクを設置できます。
リンクがクリックされているということも、上で述べているエンゲージメントと同じ意味合いを持ちます。しかしリンクをクリックして外部サイトへ遷移するまで行動しているユーザーは、「いいね」や「コメント」と比較しても温度感の高いユーザーと判断できるでしょう。
実際の集客をメインとしている場合、このリンクのクリック数をKPIとして設定し追いかけることも有効です。リンクをクリックしてもらうクリック率を測定したり、そのリンクへの誘導動線、訴求の設計をテストしたりする必要があります。
KGI、KPIを設定する際に注意すべきこと
KPI、KGIは状況に応じて変化すべき
KGI、KPIを設定してずっとその目標を追いかけていくのは重要なことですが、KPIは状況に応じて変わっていくものです。新しいSNSの出現、新しい競合の出現、市場や顧客の明確な動きなど、現段階では予想できない要素が発生することも多々あるため、状況に応じて適切なKPIを設定していきます。
事業の最終ゴールというのは変わらないものですが、その中でのInstagramのKGIも変化していくことがあります。KGIというのは事業のゴールとはまた違った意味合いになる(その分野での目標達成指標)ため、顧客や市場が変化したときにはその変化に合わせてKGIも再設定することが必要です。
現実的な目標設定をする
KGI、KPIは達成できる現実的な目標でなければいけません。「現実的な目標でなければやる気が起きない…。」ということが問題ではなく、KPIはマーケティング施策を構築していく上で重要な数値目標となります。KPIが非現実的なものになってしまうと、そこから明確なマーケティング施策を構築することができません。
かといって、あまりにも達成しやすい目の前の目標を設定してしまうのもNG。最初から全て計画するのは難しいかもしれませんが、その目標が達成しやすいかどうかを測るためにもKGI、KPI設定には”期間”をちゃんと設定するように注意しましょう。
KGI、KPIの道筋にズレがないか確認する
KPIはKGIを達成するために必要な指標とならなければいけません。KPIが単独で稼働することはないため、KGIとの関係性がずれていないかをそれぞれに対して定期的に確認しましょう。
特にInstagramの場合、仮にKGIが「商品ブランド認知の拡大」であるならば、ブランド認知が広まっていくために必要なポイントとしてKPIを設定します。リーチ数、再生数、保存数などを指標とし、その目標を達成するために投稿数、頻度などを細かなKPIとして設定していきます。となると、ここでハッシュタグの使用個数などを設定するのはブランド認知拡大とは関係が薄いのでKPIには設定できません。
このように、KGIとして目指しているゴールに対して、その通過地点として設定しているKPIの関係性がずれていないかはちゃんと確認していきましょう。どうしても達成しやすい目標を設定してしまったり、結果が数値化できない目標を設定してしまったりしがちです。
Instagramはあくまでもツールに過ぎない
Instagramを活用し始めるきっかけは様々あると思いますが、事業の中でInstagramというのは一つのツールでしかありません。まずは、このことをしっかりと意識することが成果を出すための最初のステップと言えるでしょう。
認知拡大、集客、販売…、事業を進めていく中のステップでInstagramの活用を検討される企業は多いのですが、何かしら目的があってInstagramを開始したのに途中からInstagramを運用することが目的になってしまっているケースが多々あります。Instagramはあくまでもツールとして、細かな目標設定のもと使用していかなければ事業に対して結果をもたらすことは難しくなります。
フェーズによって使い分けをする
Instagramはあくまでもツールであるため、事業のフェーズによって使い分ける必要があります。
- 事業開始時期の認知拡大が必要なのか
- 商品情報を知ってもらい、ユーザーとの関係構築が必要なのか
- 実際にウェブサイト(店舗)への集客が必要なのか
- Instagramショップなどを活用した販売が必要なのか
それぞれのフェーズに対してInstagramを活用することはできますが、明確なKGI、KPI設定を行なっていなければ事業のフェーズを無視した動きになりかねません。事業のためにInstagramを使っているのに事業の動きを無視しているような状態になってしまうと、Instagramをやっている意味もありませんね。
事業拡大のための武器としてInstagramを活用する
Instagram等のSNSは今や事業の宣伝活動としてなくてはならないものとなっています。何度も挙げているように認知拡大、集客、販売など各セクションでSNSは大きな力を発揮します。
Instagramを事業に効果的に活用できるよう、運用開始時期にはしっかりとKGI(重要目標達成指標)、KPI(重要業績評価指標)を設定し、その数値を追いかけていけるような運用体制としましょう。